モラトリアム | shingo722のブログ

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 「モラトリアム」
 
 季節が移り変わる合間の暫定的な猶予期間のようなものを僕は愛する。それは春でもなければ夏でもなく、秋でもなければ冬でもない。そんなモラトリアムの間に僕は恋をした。
 高校を出てから大学に入るまでの間に僕は花の出荷工場のようなところで短期間のアルバイトをした。彼女は同じく高校を卒業して短期間のアルバイトをしていた。同年代ということで話は合ったが、僕は生来の人見知りのせいで中々打ち解けることが出来なかった。僕は何度か彼女に恋人の有無を尋ねようとしたが、どうにも上手く切り出せなかった。
 そして密かな思いを抱えたまま3週間ほどが過ぎ、最後のアルバイトの日を迎えた。僕はアルバイト卒業の記念という名目で彼女を近くのファミレスに誘うつもりだった。最後に手渡しの給料を受け取って、あとは各々解散となったとき、工場の前に一台の車が停まり、中から大学生ぐらいの男が出て来た。なんだか嫌な予感がした。
 果たして、彼女はその年上の大学生の車に乗って帰って行った。兄弟は姉だけだと聞いていたので、僕は彼を恋人だと決めつけて諦めた。今から15年以上前の話である。その報われなかった暫定的な恋の思い出を、僕は胸の片隅に抱えたまま生きている。