「蓋」
小さい頃は科学者になりたかった。この世のあらゆるものが自分の手から生み出されるのだと思うとワクワクした。それがいつからか漫画家になりたいという夢に変わっていた。小学校で塾に通うようになってから周りは賢い子ばかりになって自分などとても科学者になどなれはしないと思ったからだ。しかしその漫画家の夢もクラスに漫画を描くのが得意な子が数人いて、自分の絵がとても惨めに思えて諦めてしまった。そのようにして、僕は自分のあらゆる可能性に蓋をしながら生きていた。夢を叶えるための強敵を前にすると自分から諦める癖がついていた。あるいはそれが諦めるには早すぎる段階だったとしても。
今僕は自分で自分に被せた蓋を取り払おうと思う。35歳にして、自分の可能性に賭けてみようと思う。今さら恥をかくことは恐くない。もう少し自分のために生きてみよう、周囲の助けと共に。