「博物館」
それは奇妙な博物館だった。いや、それを博物館と呼んで良いのかすら分からなかった。大体その外観からして奇妙にこじんまりとして首を捻りたくなるようなシロモノだった。それを博物館と知らされていなかったなら、あるいは大きめの倉庫だと人は考えるかも知れない。
「あのぅ、博物館ってここで合ってますか?」
僕はおずおずと門の前に立つ人物に声を掛けた。彼はスーツ姿に入館証を首から掛けていたので辛うじて関係者と分かった。
「はい、もちろん」
彼はちらりと僕の方を見て答えた。これが博物館で無ければ一体何なのだといった言い方だった。
「ちなみにどういった物を展示しているのでしょうか?」
「あなたが見たいと思う物を展示しております」
そう言われて、僕は少し意地悪な質問をしてみることにした。
「じゃあツタンカーメンのマスクやルイ16世が愛用した歯ブラシなんかも?」
「はい、もちろん」
僕は半信半疑で建物の中に入ってみると、果たしてそこにツタンカーメンのマスクとルイ16世が愛用した歯ブラシはあった。2つ並んでガラスケースに入れて展示されていた。僕は目を疑った。まさか本当にそんな物が展示されているとは思わなかったし、第一ルイ16世は歯ブラシなんか使っていたのだろうか?
僕が外に出ると、さっきまで門の前に立っていた男はどこにもいなかった。いや、さっきあったハズの門すら無くなっていた。振り返ると博物館の姿は消え、本当にただの倉庫が建っていた。やがて僕の視界はグニャリと曲がり、現実と幻想の区別がつかなくなっていった。