「悪夢」
「いつも人に追いかけられる夢を見るんだ」
「いつも?」
彼女は不思議そうな顔で僕のことを見た。
「失礼、よく人に追いかけられる夢を見るんだ」
僕は少し赤くなって言い直した。
「結局行き止まりにまで追い込まれて、どうしよう、もう逃げ場が無いなと思ったあたりで大汗をかいて目が覚めるんだ。毎回その繰り返しだよ」
「きっと自分に厳しいのね、あなたは」
少し間を置いて彼女はそう言った。
「自分に求めるものが多くて、いつもそれをこなせるか焦っているの。それが人に追いかけられる夢に現れているのよ」
「そんなものかな」
僕は言った。
「もっと気持ちを楽に持って」
彼女は僕の手に自分の手を重ねながら言った。彼女の手は暖かく、長い髪からふわりと良い香りがした。
「あなたは自分が思っているより素敵なものをたくさん持っているわ」
僕はボンヤリと彼女の言葉に耳を傾けながら、少しずつ気持ちが柔らかく、軽くなっていくのを感じていた。