石の兵隊 | shingo722のブログ

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 「石の兵隊」
 
 柱時計の針は静かに時を刻み続けていた。しかしそれは部屋の中の時間を細分化しているだけであって、実際には時間など流れていないのではないかと僕は思った。その部屋の中ではありとあらゆるものがその当時のまま静止していた。軍隊当時の勲章、兵隊仲間と撮った写真。安楽椅子の上の老人だけが唯一、時の流れを示していた。
「ワシは兵隊として第一線で闘っていた」
 老人は静かに言った。
「これがそのとき貰った勲章だ。ワシは国のためなら命を捨てる覚悟だった。もちろん今だって国に対する忠誠心に何の変わりもない」
 僕は言ってあげたかった。戦争はもう終わったんだと。しかし、失われた時の中を虚に彷徨う老人の目には現在のことなど何一つ映りはしないのだ。まるで昔話に出てくる石になった兵隊のように。苔がむしてもなお彼は国のために立ち続けているのだ。どこからかあの道化が現れて、戦争の終わりを告げる戯曲を踊るまで。石の兵隊の目から、涙をこぼさせるまでは。