「マイホーム」
家を建て始めてから20日になる。もちろん僕が現場に出て仕事をするわけではないが、一からこだわり始めると、どうしても実際に現場に行って見て、職人たちの仕事を監視せずにはいられなくなった。まさに監視という言葉がぴったりなぐらい、僕は自分の家が建てられていく様を見ることに取り憑かれていた。「あんた、そこで逐一見てられちゃ仕事にならないよ」と棟梁にどやされようがお構い無しだった。
それはまるで自分の血肉を分けた子供を見るようだった。そしてなぜか僕はそこに異常なまでの完璧性を求めていた。何から何まで自分の注文通りに行かなくては気が済まなくなっていた。普段生活しているときでも会社で仕事をしているときでも自分の家が今まさに建てられていく様が頭から離れなかった。
まず初めに妻が出て行った。二人のマイホームの完成を見ることなく、彼女は僕と家の元を去って行った。まあいいさ、これから出来るのは僕だけのマイホームだ。次に部下たちが僕を見放したようだった。それはそうだ、ロクに話も聞かず上の空で仕事をする上司についてくる部下などいない。僕は一人になった。
今日も僕は自分の家が建てられていく様を眺めている。まるで自分の分身が出来るのを見ている様に。そして最後にはそれを眺めているのが僕自身なのか、それ自体が僕自身なのか分からなくなっていた。