「ささやかな才能」
小学生の頃から本を読むのが好きだった。本当は友達が少ないせいで教室で本を読んで時間を潰しているうちに、実際に本を読むことが好きになったワケだが、きっかけは何だって構わないだろう。
「クラスで読書感想文やら、何か文章を書くことになると、よく先生は僕の書いたものをみんなの前で読んでくれたんだ」
「きっと上手に書けていたのね」
「文章を書くことと読むことに関してだけは、昔からささやかな才能があったんだよ」
「あら、あなたの才能は他にもあると思うわよ」
「そう感じる?」
「ええ、感受性が豊かだし、きっと他にも才能を持っているはずよ」
「そんなものかな」
僕は少し照れ笑いしながら言った。彼女は笑って僕の頬に口づけした。それはとても自然ですごく温かい仕草だった。
「ねえ、知ってる?」
彼女は言った。
「私は人の隠れた才能を見つけることに関してだけは、ささやかな才能があるのよ」
でも彼女は自分では気付いていないのかも知れない。彼女には僕のことを喜ばせる、とても大きな才能があることを。