結婚記念日 | shingo722のブログ

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 「結婚記念日」
 
 柔らかに降り注ぐ雨が庭の紫陽花をしっとりと濡らしていた。縁側に出る窓越しにそんな外の景色を眺めていると、僕の頭はわずかに痛んだ。
 昨日妻とささいなことでケンカした。僕の思い違いが原因で、結婚記念日の予定を上手く合わせることが出来なかったのだ。僕が思い違いに気付き、すぐに詫びたが妻は涙を流した。僕たちは結婚してちょうど1年目で子どもを作るかどうかの微妙な時期に来ていた。
「あなたはきっと子どもが欲しくないんだわ」
 妻はそう言って泣いた。
「一体どうしてそんなことを言うんだ?」
 僕は呆然として聞いた。
「私との間に子どもが欲しくないから、そんな風に私のやることなす事を悪くとって責めるのよ」
 僕は身体を折るようにしてしゃがみ込んだ妻の身体を抱きしめた。妻の身体は固く強張り冷え切っていた。空気中には翌日に降る雨を予感させる匂いがした。
「悪かった」
 僕はそう言って妻をもう一度強く抱きしめた。
「全て僕の思い違いが原因で君に何の責任もない。世界中の誰よりも君を愛しているし、今後も離すつもりは無い。もし君が僕を赦してくれるなら、そしてもし二人の間に子どもが生まれたなら、僕は自分の全てを懸けて君たちを幸せにすることを誓うよ」
 僕が彼女の背中を優しく撫でながらそう言うと、彼女の中の何かがほんの僅かに溶け出すのが感じられた。
 それから、夜中に開いている店が無かったので二人でコンビニに行き、ショートケーキを2つ買って来て一緒に食べた。そのようにして僕たちは最初の結婚記念日を不器用に乗り越えたのだった。
 雨は静かに降り続いていた。やがて僕は寝室に行き、ベッドで眠る妻の頬を指でなぞりながら囁くように声を掛けた。
「ねえ、起きて。朝が来たよ」