思い込み | shingo722のブログ

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 「思い込み」
 
 「ただの一文字も書けないんだ」
 その友人は言った。
「僕の考えている文学的苦悩、情念、世の中に対する不平、不満、そういったものを言葉に移し換えることが出来たらなぁ」
 彼は分厚い丸眼鏡を掛けた上にボサボサに伸ばした髪の毛を掻きむしりながら言った。
「あのさ」
 僕は言った。
「今どんな風な生活をしているの?」
「今かい?大体昼過ぎに起きて昼は延々と近所を散歩して、夜は文学仲間が集まるバーで酒を飲んで帰って、だいたい深夜は執筆にあてているかな」
「ずっとそんな生活だったかな?」
「いや、小説家になると決めてからだね。それまでは朝の仕事をしていたから」
「思い切って朝型の生活に戻してみたら?あと君、酒が飲めたっけ?」
「いや、ほとんど飲めない。でも小説家は酒を飲むものだろう?」
「いや、無理に飲む必要は無いと思うよ。それに眼鏡も度があったものに戻して髪も切りなよ。ずいぶん気分転換になると思うよ」
「そんなものかな」
 彼の家を出た後、学生時代からの彼の真面目すぎる性格と思い込みの激しさを思い返していた。まったく、なんでも形から入るタイプなのだ。