「朝の街」
冬の朝6時はまだ暗い。僕はジョギングシューズを履き家を出る。陸上部の自主練だ。高校に上がって、1年生ながら長距離の選手に選ばれたことは嬉しかったがプレッシャーも大きい。先輩たちの目も気になる。それを振り払うかのようにがむしゃらに日々練習に打ち込んだ。
裏山の舗装された緩やかな坂を無理のないペースで登り、脚が慣れた頃に山頂に向かう急な斜面を思い切ったペースで駆け上がる。最近見つけたお気に入りの練習コースだ。
木立を抜け山頂に出たとき、思いがけない光景が目に飛び込んできた。登りつつある朝日が街をオレンジ色に染め、眩い光に僕は目を細めた。さっきまで眠っていた街が目を覚ます瞬間だった。
僕はその光景を目に焼き付けてから、今度はゆっくりと急斜面を駆け降りて行った。何かが目の前で開けた気がした。不安やプレッシャーは相変わらず僕の中にあったが、恐れずに向かっていこう。朝の街を駆け抜けながら、僕の心は晴れやかだった。