屋敷 | shingo722のブログ

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 「屋敷」
 
 その青さは他のどんな種類の青さとも異なっていた。ここの空は他のどんなところでみる空より青かった。濃縮された青。私は眼前に広がるビーチと美しい海同様、この空を見るために毎年このシーズンにここに休暇に訪れるのだった。
 私が木陰の椅子に腰を下ろして本を読んでいるとガランとした砂浜で、遠くの方から女性が1人、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。私が再び小説に目を落とししばらく読み進んだところで気配を感じて目をあげた。その女性は私の傍で本を覗き込むようにして佇んでいた。美しい人だった。
「何をしてらっしゃるの?」
「ご覧のとおり、本を読んでいます」
「私はあそこの家に住んでいるの」
 彼女は唐突に言った。彼女の指差す先にはビーチ近くの山の中腹あたりにある巨大な屋敷があった。
「なるほど」
「あなた、午後は暇?」
「ええ、まあ」
「とても簡単な仕事なの」
 彼女は言った。常に1つか2つ飛ばしに先にある言葉を喋っているような印象だった。
「私と主人が愉しんでいる間、横に立って見ておいてくれればいいの」
 私は溜め息をついた。
「悪いけれど僕にはそういう趣味は無いんです」
「あなたはいつまでここにいるの?」
「あと1週間ほどですね」
「明日また来るわ。それまで考えておいて。ある程度のお礼はするわ」
「ねえ、ちょっと待って…」
 彼女はもう屋敷に向かって歩いていた。それからしばらくの間、私は小説に集中することが出来なくなった。とても美しい女性だった。彼女が主人とその行為をしているのを見ておく?考えれば考えるほど私の頭は混乱した。やがてその混乱は限定されたイメージとなって私の頭を離れなくなった。美しい空と海とどこまでも白く続くビーチの中で、私は激しく混乱していた。