機械 | shingo722のブログ

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 「機械」
 
 ウィーンという微かなギアの音と共に彼はコーヒーカップに手を掛けた。そしてその銀色の指先でカップを口元まで運ぶと美味そうにそれを飲んだ。
「本当はね」
 彼は言った。
「食事はそれほど摂る必要が無いんだ。身体の8割近くが機械だからね、ガソリンと充電のハイブリッドで事足りる。しかし…」
 カタンと音を立ててカップをソーサーに戻すと、彼は私の顔を見た。
「私が頼んだのだよ。味覚は残してくれるようにね。だからこれは名残のようなものだよ。完全に生身の人間だったときのね」
 彼の片方の目はスコープになっていたし、唇も半分ほど、銀メッキになっていた。それでも彼は唇を歪めて笑った。おそらく何か柔らかい素材で出来ているのだろう。僕は口を開いた。
「単刀直入に言います。あなたは許可なく人工知能を搭載したロボットを製作している。これは政府の規則に反します。」
「同胞を増やそうとするのは生物としての本能だよ」
 彼はまた唇を歪めて笑った。
「それに、私の脳はチップを埋め込むことにより処理能力が飛躍的に増大している。あの程度のロボットたちを制作するのはワケないことだった」
「中には攻撃能力を備えたロボットもいるという情報が入ってきています」
「自然な淘汰だよ。優秀な民族が生き残る。たまたまそれがロボットだったというだけのことだ」
 彼は思考が徐々に機械よりになっているのだ。私は意を決して自動小銃を取り出すと、安全装置を外した。