紫煙 | shingo722のブログ

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 「紫煙」
 
 紫煙の奥に君の笑顔が浮かぶ。僕の真似をして慣れない煙草をふかして咳き込む君の背をさすりながら僕が微笑むと、やがて君も吹き出して二人して笑い合った。
 思い出の中の僕はなぜかいつも煙草を吸っていて、君はよく僕の真似をして、それを吸ってはむせていた。それでもやっぱり最後には二人とも笑っていたし、僕はよく笑う君のことが好きだった。
 やがて君はむせることなく煙草を吸えるようになり、いつしか気怠い目をするようになった。二人して無邪気に笑うことも少なくなった。
 君がいなくなった部屋で一人で吸った煙を吐き出すと、窓から吹き込む風がそれを散らせていった。いつの間にか二人はすれ違い、君は消えてしまった。まるで風に揺らぎ儚く消えてゆく紫煙のように。