夏休み | shingo722のブログ

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 「夏休み」
 
 日に数本しか無いバスを降りると、山と田んぼに囲まれた小道がどこまでも続いている。けたたましい蝉の声が鳴り響く木立を抜けると、親戚の家がある。僕はいつも学校が夏休みに入ると数週間、ここに泊めてもらう。
 座敷に上げてもらうと縁側に女の子がやって来る。近所に住む僕と同い年の女の子だ。僕らは毎日近くの川でザリガニを釣ったり近所の森を散歩したりして遊ぶ。そしてやはり、僕は彼女を少し異性として意識し始めている。
 僕が都会に帰る前日、神社でやってる夏祭りで二人並んで花火を見た。
「明日帰るの?」
「うん」
「次来るのはまた来年?」
「うん」
「そっか」
 祭囃子が急に遠くなった気がした。夜店の灯りに照らされた彼女の顔は寂しそうに俯いていた。そのとき、一際大きな音と共に打ち上げ花火が夏の夜空に咲いた。
「また、会えるよね?」
 そう聞いた彼女の美しい顔と、一筋の涙を花火が照らしていた。
 翌日、バスの一番後ろの席に母親と並んで座った僕を彼女はいつまでも見送っていた。僕は来年も必ず彼女に会いに来ると固く心に誓った。おそらく、ここに来た時と帰る時では僕の顔つきはまた違ったものになっていたことだろう。
 …こんな少年時代を、僕は過ごしたかった。