「明かり」
確かに、手のひらの内にあった夢が砕ける感触がした。それだけを頼りに生きてきたつもりだった。
上京してから俳優の夢を追いかけてオーディションを受け続ける日々がいつしか惰性になっていた。アルバイト仲間に俳優の夢を語るのが恥ずかしくなったのはいつからだろう。30歳を過ぎれば嫌でも自分の年齢を意識する。オーディションの年齢制限に引っかかることも多くなった。
これが最後と決めたオーディションの不合格通知が届いたとき、扉の閉まる音がハッキリと聞こえた。やり残しは無いかと問われれば正直、いくらでもある気がした。でもそれは、この先挑戦を続けたとて同じだろう。あのときこうしていれば、他にもっと出来ることはなかったのか…?
アパートを引き払う前日、ベランダで東京の夜景を見ながらタバコを吸った。少しキザな気もしたが、最後ぐらい自分に酔ってもいいような気がしたのだ。
この東京の明かりは多くの人の夢と挫折で出来ている。その眩い光の中で、一体どれだけの人が夢を掴む事が出来るのだろうか?