「労働」
際限の無い疲労感に僕は襲われ続けていた。ノミを振るう腕は疲労のために固く強張り、掌は血豆が出来た傍から潰れては固まりを繰り返し、もはや感覚すら無かった。
それは労働の疲労と言うよりも、生きる事が根源的に内包するしんどさから来るものの様だった。堅い岩盤をやっと打ち崩したかと思った矢先に更にもっと堅い岩盤にぶち当たるという事がしょっちゅうだった。キリが無いのだ。
それはまったく、労多くして得るものの少ない仕事だった。毎日上司やら役人やらが代わる代わるやって来ては、ここの岩盤はもっと削れるだの、進捗が遅いだのケチをつけては、その遅れた分を給料から天引きして行った。毎日の仕事終わりにビールを飲む金すらままならない。
「もう全くもって我慢ならんね」
酒場でヤケ酒を飲みながら同僚のひとりが言った。
「毎日現場の人間が汗水垂らして働いてる中、連中は涼しい部屋で書類を眺めてああしろ、こうしろ言うだけじゃないか。服を汚したく無いものだから、ロクに現場を調べもしない」
周りからは「そうだそうだ!」と声が上がった。
「革命だ!」
彼は声高に叫んだ。しかし僕は、いや皆んな解っていた。ここでどれだけ威勢のいいことを叫んでも明日からの日々に変化など無いことを。日々際限なく続く労働の中でしか我々に生きるすべがないこと。
僕は今日もノミを振い続ける。僅かな糧の為に。僅かな悦びの為に。たとえどれだけ搾取されようとも、どれだけ苦しいの方が多かろうとも。それでも。