「雨音」
夕方6時に降る雨は物哀しい。まるで世界中で雨が降っているみたいだ。外で雨が降っている日のアパートの6畳間はさらにもっと物哀しい。それがワンルームならなおさらだ。キッチンの蛇口からは一定の間隔で水滴が滴れる音がする。コックが馬鹿になっているのだ。薄暗い部屋で床に座り、壁にもたれながら煙草を吸い、そんな雨音やら蛇口の水音やらを聞くともなく聞いていると、電話が掛かって来る。取るまでもなく相手は分かっている。
「もしもし」
彼女は言った。もしもし、この前はごめんなさい、私もどうしていいか分からなくて…。
「今度いつ会える?」
わからない。
「これから先、私とどうなりたい?」
わからない。
答えの出ない堂々巡りを繰り返した挙句、僕は電話を切った。次に着信音が鳴ったとき、僕はもうそれを取らない。
雨音が少し強くなったような気がした。まだ9月だというのに少し肌寒さを感じた。暖房をつけようかどうか迷ったが、結局つけないことにした。それが気候によるものなのか、それとも僕の内側から来る冷気なのか、判別がつかなかった。