「コレクション」
「こちらは主人のコレクションルームも兼ねております」
静かに扉を閉めるとその老執事は言った。
「主人が来るまでもうしばらくお待ち下さい」
僕は重厚な作りの食卓に腰を下ろすとあらためて部屋を見回した。コレクターを自認するだけあってなかなかのアンティーク・コレクションだった。
「こちらは主人が自身で厳選した茶葉で淹れた紅茶でございます」
僕は頷いてその紅茶をすすった。その時点で僕が部屋に入ってから20分近くが経過していた。
「ご主人はそろそろいらっしゃるのでしょうか…」
「こちら主人のヨーロッパ紀行の際に撮った写真のアルバムでございます」
老執事は僕の言葉を遮る様に言った。
「ふむ」
そろそろ1時間が経過しようとしていた。
「こちら、主人がロシア旅行の際に買い求めたマトリョーシカでございます」
僕がテーブルの上に順番に並べられたマトリョーシカをうんざりした気持ちで眺めていたとき、扉が開き主人が入ってきた。1時間20分が経っていた。
「ようこそ」
鷹揚に手を差し出して僕と握手を交わすと、主人はゆったりと僕の向かいに腰を下ろした。
「コレクションは楽しんで頂けましたかな?」
「ええ、そりゃもう」
そこで僕は主人の頭に隠しようの無い寝ぐせの跡が付いていることに気が付いた。
「私という人間を知って頂くために、まず客人とお会いする前に私のコレクション…ほんの一部ですが…をご覧頂くことにしているんです」
「なるほど」
僕は応えながら、彼の顔にくっきりと付いた枕の跡を眺めた。寝過ごしたなら寝過ごしたと、はっきり言ってくれればいいのに。