「工場」
プシューッというプレス機の音は断続的に響いていた。作業室はそういった機械の音を別にすれば概ね静寂に包まれていた。ここでは無駄口を叩く者はほとんど居ない。皆が白い作業着に身を包んで黙々と作業をしている。
僕の担当はラインで流れてくるパーツ②にこちらの傍にうずたかく積んであるパーツ③を組み合わせ、あとでパーツ①と組み合わせる下ごしらえをする作業である。どの工場作業も同じだが、単純だけれど根気のいる作業である。集中力が切れてくると交代を頼み、休憩を取る。ミスを抑えるためである。15分ほど気分転換すると再び作業にかかる。僕はこうしてここで1日8時間ほど働いている。楽な作業の割に給料は良い。
「あのさ」
休憩時間に僕は同じラインで作業をしている仲間に話しかけた。
「僕たち毎日こうして流れ作業をしているわけだけどさ、結局一体これは何を作っているのかな」
「そうだねぇ」
彼はゆっくりと伸びをしながら答えた。
「さっぱり分からないや」
そこで彼は大きなあくびをした。僕は彼のこういう、のんびりしたところがとても好きだ。
僕らは毎日毎日、工場に通って何かを作るためのパーツを組み合わせ続けている。そして仕事が終わると仲間と共に街の居酒屋でビールを飲むか、部屋で1人でウイスキーを飲んで眠る。週に1日か2日、休みの日は身体を休めるか恋人とどこかに出掛けるかして過ごす。今のところ僕はその様な生活にだいたい満足している。