新大陸 | shingo722のブログ

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 「新大陸」
 
 もう何日、海の上を漂っただろう。食糧は底をつき、船員たちの疲弊も激しい。
 国を出るときは多くの人に見送られ、国王にも温かい言葉を掛けて頂いた。国の威信を背負い、国王の名誉にかけて新大陸を発見する。そうやって意気揚々と港を出たのだった。
 絶望に打ちひしがれ、力無く船長室でうなだれていたそのとき、船員の声が船の中にこだました。
「大陸が見えるぞ!」
 希望に打たれて全身が痺れるのを感じながら船員から望遠鏡を借りて覗くと、果たして大陸の巨大な黒い影が遠くの海上に広がっていた。
「面舵いっぱーい!」
 こうなると現金なもので、皆身体の底から力が湧いてきていた。
 意気揚々と船を岸につけ、上陸した。
「ついに新大陸を発見した…」
 突き動かされるように我々は大陸の奥へ奥へと歩を進めた。
 おそらく先住民の集落であろう場所に高鳴る胸に踊らされるまま導かれる様に入って行ったところで声を掛けられた。
「観光の方ですか?」
 聞き慣れた言語である。
「え?」
「ようこそ○○村の朝市へ。新鮮な魚入ってますよ」
 完全に自国領の村であった。困惑しながら傍の航海士に目をやると、
「あ、このコンパス狂ってますね…」
 我々は半死半生で自国の海を彷徨っていたことになる。
「どうされます、ブロンクス様?」
「帰るしかなかろう」
 結局我々は朝市で朝食だけ食べて帰ることにした。確かに新鮮で美味い魚だった。
 こんな具合にコロンブス以外にも新大陸を探して見つけられなかった人たちもいたんだろうなぁ。