影 | shingo722のブログ

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 「影」
 
 不安はいつも影のようにピタリと僕の背中に張り付いていた。生来ボーッとしたところのある僕は、幼い頃からよく転んだり遊具から落ちたりしてすり傷を作って親を心配させた。自分自身ではどれだけ気を付けてもそれは直らなかった。
 自分がいつか大きな怪我をするかも知れない。そんな不安はいつしか可視化出来る影となり、僕につきまとった。まるでやがて訪れる死を告げに来た死神のように。
 その日僕は新社会人となるべく会社の面接に急いでいた。しかし生来の不注意さによって道の脇から来るトラックに気が付かなかった。瞬間、僕は死を覚悟した。今さら自分の不注意さを呪っても仕方がない。昔からの不安が現実のものとなろうとしたそのとき、目の前をよぎったのはあの影だった。その影に包まれるように僕の視界はブラックアウトし、気が付いたときには僕は道の端に倒れていた。
 それ以来、あの影を見る事は無くなっていた。今にして思えば、昔から派手に転んだり遊具から転落しても大きな怪我に繋がらなかったのは、あの影のおかげだったのかも知れない。最後に影は僕の身代わりとなって向こうの世界へ行ったのだ。そう思うと、今まで死神のように不吉に思っていた影に申し訳ない気がした。あれは守護霊のようなものだったのかも知れない。
 今では僕は社会人の一員として何とか毎日を生きている。昔からの不注意さも、少しずつではあるが改めるようにしている。差し当たって、自分が誰かを影のように守るというところまでは、至らないにしても。