「讃美歌」
近くの教会から讃美歌が響いていた。夜にミサでもあるのだろう。僕たちは薄暗い部屋のベッドの上で抱き合いながらそれを聞いていた。
「ねぇ、あなた神を信じる?」
「いいや」
「なぜ?」
「戦争が無くならないから」
「でも神の名の下に戦う人もいるわ」
「なるほど」
僕がそう言うと彼女は微笑んだ。
「君は神を信じる?」
「いいえ」
彼女はそう言うと僕に跨った。
「私は愛しか信じない」
ベッドの上でひとしきり二人の無神論者は愛を確かめ合った。
神の名の下に戦う人間もいれば、命を落とすときに「神は死んだ」と呟く人もいるだろう。神など所詮、人それぞれの心の中にしか存在しないし、いかなる状況でも最後まで神を信じ抜ける人間がどれほどいるだろう?
窓の外からは讃美歌がひときわ大きく響いていた。