「打ち上げ花火」
夜空に花開いた打ち上げ花火がその華やかさの内に夏の盛りと、そして一瞬で闇に消えゆくことで青春の儚さを表しているようだった。
夏祭り人混みの中に浴衣姿の君を見かけたとき僕がまず思ったのは、どうか男連れでないようにということだった。しかし僕の懸命な祈りも虚しく、果たして君は同級生の男子に駆け寄ると、手を取り合って夜店をぶらぶらと散策し始めた。
そこからの夜店のオレンジの明かりは色を失ったようにモノクロに見え、もしリンゴ飴を食べていたならきっとほろ苦くさえあっただろう。もちろん僕はそんな物を食べる気さえ起きなかったのだが。
あれから十数年経った今でも、あのときの記憶は微かな胸の疼きを伴って、モノクロのまま心のアルバムの片隅に仕舞い込まれている。そして夏の花火を見るたびに、切ない思いがよぎる。