「ロック」
「24まで生きるわ」
彼女は言った。
「そこから先の人生なんて砂糖水みたいなものよ」
僕は彼女の目を見たが、どこまで本気で言ってるのか判別しかねた。
喫茶店では大きな音でロック・ミュージックが掛かっていた。彼女がロック・ミュージシャンや革命家のように24で死んだとして、誰が彼女のことを覚えているだろう?吸い殻でいっぱいになった彼女の前の灰皿からはまるで革命の狼煙のように一筋の煙が立ち上っていた。
あれから10年が経った。僕はサラリーマンとして毎朝会社に出勤して、契約を取るために方々に電話を掛けたり、伝票を整理したりして過ごしている。彼女は一体いま何をしているのだろう。まだあの喫茶店で灰皿を煙草で一杯にしながら本を読んでいるのだろうか?それとも僕みたいに、砂糖水みたいな人生を生きているのだろうか?