「雷」
「ねぇ、知ってる?雷が落ちた田んぼで育った稲から出来たお米は美味しくなるんだって」
「…」
「だから雷っていう漢字は雨に田んぼって書くし、稲妻は稲の妻って書くでしょ?」
「…だから何よ」
彼女は僕を睨みつけて言った。
「それを知ってたからって今雷が鳴り止むわけじゃないでしょ。そんなくだらない雑学なんか喋ってる暇があったら懐中電灯の一つでも探して来たらどうなの?」
「いや、実は僕も暗いところは苦手で…」
「なによ、まったく情けないんだから。それでも男なの?雑学やら何やら知識があったってね、停電の時に懐中電灯も取りに行けない男は腰抜けよ」
こういう時の女の子ってまったく容赦がない。
「だいたいあなたは普段からね…」
そこでドカンと一際大きな雷が鳴った。
「きゃあぁぁぁ!」
彼女はさっきまでの威勢はどこへやら僕にしがみついて来た。
「こういう時ぐらいしっかりしてよね」
彼女はぶるぶると僕の腕の中で震えながら言った。僕は彼女のこういうところがたまらなく好きだ。