「誠実であろうとすることについて」
「それはきっとどうしようもない種類のことなのよ」
彼女が微笑んでそう言ったとき、僕はほとんど泣き出しそうだった。今ここで彼女がぼくを口汚く罵ってくれたらどれほど楽だっただろう。他に好きな人が出来た、そう僕が告げたとき、彼女はどこか申しわけなさそうな顔で僕をみて「そう」と言った。
彼女の居なくなった部屋でひとりで居ると、思い出が止めどなく溢れて来た。そしてそのどれもが彼女の良いところばかりだった。僕は僕なりに誠実であろうとした。しかしそれが結果として彼女を深く傷つけることになったのかも知れない。僕は自分が犯してしまった罪を数えながら、深い沈黙の中へと沈み込んで行った。