「祈り」
それは静かな、祈りのような雨だった。街全体に降り注いで、人や動物や街そのものの魂を優しく慰撫する鎮魂歌のようだった。
「ずっと外を見ているのね」
彼女が言った。
「雨は好き?」
「そうだね」
「私も好きよ。まるで山小屋に遭難したみたいで」
「遭難?」
「今は外が大雪で仕方なく私たちは山小屋に篭っているのよ。でもそういうのってちょっとワクワクしない?」
僕は笑ってコーヒーを飲んだ。外では相変わらず静かに雨が降っていた。まるで僕たちがこれまで犯した罪や穢れさえ、洗い流してくれるかのように。