虚無 | shingo722のブログ

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 「虚無」
 
 「いつか、どこかでだよ」
 それは捉えどころの無い柔らかい声だった。
「以前君と会ったのはね。しかし、君とはまた出会えそうな気がするんだ。“現実世界の”どこかでね」
 顔の無い男がどこかに行ってしまいそうな気配を見せたので僕は慌てて声を掛けた。
「ねぇ、待って。あなたは一体誰なんですか?どうして僕の夢の中に出て来ることが出来たんですか?どうしてここがわかったんですか?」
 顔の無い男はその虚無の顔でニヤリと笑った。
「あなたは僕とまた会えそうだと言う。しかし、現実であなたと会ったところで、僕はあなたのことが分かるのでしょうか?そして、もし会えるとしたら一体それは現実世界のどこなんだろう?」
「いつか、どこかでだよ」
 顔の無い男は繰り返した。そして虚無の中に吸い込まれるように消えて行った。僕は声を限りに叫ぼうとしたが、それは声にならなかった。だいたい、僕は彼の名前すら知らないのだ。
 ぐっしょりと汗をかいて目を覚ました。時計のデジタル表示は午前2時を示していた。洗面所に降りて行って顔を洗っている時にふと、あの顔の無い男の正体は自分なのではないかという気がした。鏡の中の自分の顔をじっと見ていると、次第にその虚無の中に吸い込まれていきそうな気がしてきた。