流儀 | shingo722のブログ

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 「流儀」
 
 「完璧な職場なんて存在しないよ」
 私の上司は嘲笑混じりに行った。そしてその冷ややかな視線を私に向けた。
「君がどう思っているか知らないがね、世の中には何から何まで思い通りに行くという職場なんて無いんだよ」
「あなたがどう思っているか知りませんが」
 私は言った。
「世の中には我慢の行く種類の出来事とそうでは無い出来事というものが存在するんですよ」
「お好きに」
 私の上司は言った。そして肩をすくめて周りの社員達を見渡した。やれやれ、この男に何を言っても無駄のようだ、と言わんばかりに。周りの人間達も皆、彼に同意といった感じだった。中には上司に同意の意を示す為、同じように肩をすくめる者もいた。そのようにして私は7年勤めた職場を辞めた。
 家に帰り、夕食の席で妻に仕事を辞めたことを改めて報告した。妻は食事を続けながら、
「そう」
 とだけ言った。そして全く興味なさそうに、「お疲れ様」
 と付け加えた。
 私は部屋に戻ると自分の考えを改めて整理してみた。私が貫こうとしている流儀は、どうやら誰の心も動かさなかったようだった。だが、そんなことは瑣末なことだった。要は私には貫きたい流儀があり、それに殉ずる覚悟を示す事が出来たということが1番大事な事なのだ。たとえそれが周りから見てどれだけ滑稽に映ろうが、私には曲げられない想いがある事を示す事が出来た。それだけで充分だ。私は白紙に戻ったスケジュール帳を前に、これからはまた新たな己との闘いが始まる、そう強く覚悟を決めた。