黒猫 | shingo722のブログ

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 「黒猫」
 
 軒を伝う雨の音で目が覚めた。低く垂れ込めた雲がしとしとと6月の雨を降らせていた。梅雨特有の勢いこそ強く無いがいつ止むとも知れない長い雨だ。僕はキッチンでコーヒーを淹れ、テレビのニュースを見ながらゆっくりとそれを飲んだ。悲惨ではあるが僕には直接の関係の無いニュースがいくつかあった。当たり前の事ではあるが、世界は世界の方で僕とは関係無く営みを続けているようだった。
 ふと縁側越しに庭を見ると、1匹の黒猫がこちらを恐る恐る見ていた。どうやら野良猫の様で、用心深そうな目をしていた。僕は戸棚からパック入りの鰹節を取り出すと、紙皿に入れて軒先の踏み石の上に置いてやった。猫はしばらくどうしたものかと思案していたが、やがて観念したようにこちらにやってくると、旨そうに鰹節を食べた。僕はしばらくその様子を眺めていたが、ボツボツと書斎で書き物をするためにキッチンをあとにした。部屋を出しなにチラリと見ると猫は空になった皿を前にじっと僕の方を見ていた。これからはちょくちょく通ってくる様になるかもしれない。
 雨の降る朝に庭にやってきた小さな黒い子猫とその光景は、不思議と僕の心に焼き付いて、その日1日僕をノスタルジックな心持ちで満たし続けたのであった。