「境界線」
窓の外には夕暮れの景色が広がっていた。薄闇が徐々に昼間の明るさを侵食し、夕陽の劇的なオレンジを挟んで濃紺の闇へと景色を変貌させていった。その境界となったオレンジの眩さがより一層夜の闇を引き立たせていた。僕はそんな景色の移り変わりを眺めながら、自分のこれまでの人生を振り返っていた。果たされなかった約束、もう戻る事のない10代、20代の頃の心の震え。自分が手放したもの、そして自分の手からこぼれ落ちて行ったものを思うと、涙が溢れそうになったが、懸命に僕はそれを堪えた。僕は人生の折り返し地点に立とうとしていた。
今を人生の前半と後半を分つ境界線と捉えるならば、これからの人生の薄闇、そして歳を経るごとにその濃さを増す濃紺の闇を切り抜ける希望の光を求めながら、手探りでこれからの人生を歩んで行かねばならない。夕陽の劇的なまでのオレンジに照らされながら、僕は今強くそう思う。