古本屋の店先にて | shingo722のブログ

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 「古本屋の店先にて」
 
 その小さな古本屋で彼女は毎日店番をしていた。晴れの日も小雨が降る日も(大雨の日は僕は外出しないから知らない)暑い日も比較的過ごしやすい日も、来る日も来る日も彼女はその古本屋の店先で退屈そうに古本のページを繰っていた。
「そんなに毎日店番をしていて飽きないの?」
 ある日僕は彼女に尋ねてみた。
「そうねぇ」
 彼女は5秒ばかり考えていた。
「退屈といえば退屈だけど意外と飽きないものよ」
「ふうん」
「あなた本は好き?」
「分からない」
 僕は言った。
「そもそも学校の教科書以外に本なんて読んだことないし、君みたいに来る日も来る日も店先で本のページを繰るなんて思いもつかなかったな」
「そんな人生もあるのよ」
 彼女は大人っぽく言った。彼女はおそらく僕と同い年ぐらいで16、7といったところだが、それはそれとして彼女が本のページを繰る姿はなかなか素敵だ。
 そんなわけで彼女は今日も店先で本のページを繰り続け、ときおり猫の相手をしたりして過ごしている。僕は相変わらずあまり本を読まない。
 眠りこけてしまったような街の片隅の小さな古本屋で退屈そうに本のページを繰る少女がいた。そして僕は彼女にすごく心惹かれていた。僕が16だか17歳だった頃の心温まる思い出の一つである。