月光 | shingo722のブログ

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 「月光」
 
 寄せては返す波の音が規則正しくあたりに響いていた。夜の海岸沿いの道には人影は無く、僕たちだけだった。
「ねぇ、少し波打ち際まで行ってみない?」
 彼女がそう言った。砂浜はひんやりとして、まだ少し暖かい初秋の昼間とは対照的だった。水平線まで見渡しても船影ひとつ無く、まるで世界に僕たち2人だけしかいないみたいだった。そして、本当にそうだったらどんなにいいだろうと思った。
「ねぇ、よくこんなふうに女の子と2人で夜の海岸を散歩したりするの?」
「いや、君が初めてだよ」
「本当かしら?」
 彼女はクスクスと笑いながら言った。
「本当に口説きたい人としか夜の海岸を散歩しないって決めてるんだ」
「そう?」
「月の光が悪いところを隠してくれるしね」
「私の?」
「まさか。君に悪いところなんて見当たらないね」
「それ本気で言ってる?」
「あの月に誓って本当だよ」
「よろしい」
 やがて規則正しい波の音だけが響く砂浜で僕らの影が重なった。空に浮かぶ下弦の月が2人だけの世界を見守ってくれていた。