「理想」
「ねぇ、おとぎの国って素敵だと思わない?」
彼女は言った。
「可愛らしい生き物に囲まれて、魔法の国で暮らせたらどんなに素敵でしょう」
「そんな夢ばかり見ていても仕方ないだろう」
彼は言った。
「この高度資本主義社会において生き残るには競争を勝ち抜くために日々努力しなければならないんだ」
「あら、おとぎの国には争いなんか無いわよ」
彼女は言った。
「そこでは皆んながお互いのことを思いやって暮らしているから争いなんか起こらないの。みんなは毎日美味しいお菓子のことや、楽しいことだけを考えていればいいの」
「そんなの暮らしとして成り立たない。向上心なくして個の確立はありえない!」
彼は白熱して言った。
「あの」
僕はおずおずと口を挟んだ。
「それで、今度の旅行先はどうする?」
「絶対ディズニーランド」
彼女は断固宣言した。
「君いつもそれしか言わないじゃないか。京都か奈良で歴史的建造物を巡って温故知新の気持ちを育もうじゃないか」
「あなただってそればっかり。どうして休みの日までお勉強のことを考えなくちゃならないの?」
「じゃあさ」
僕は言った。
「温泉でも行くのはどう?それなら美味しいものも食べられるし、周りには歴史ある名所なんかもあるし」
「しょうがないわね」
「ふむ。まぁ良しとしようか」
2人は渋々賛同した。やれやれ。夢見がち過ぎても勉強熱心過ぎても話は前に進まないのだ。