夏の終わり | shingo722のブログ

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 「夏の終わり」
 
 打ち上げ花火が夜空を明るく染め、様々な色合いに彩ったとき、確かにこの夏は絶頂を迎えたようだった。しかし、全ての絶頂がその内側に衰退の兆しを抱えている様に、心地よい夏の夜風にも祭囃子の音色にも、やがて訪れる秋の匂いがした。
 僕たちは山の上の宿に泊まりつつ、夜になると麓で行われる祭を冷やかしに来ていた。海の匂いがした。山と海に囲まれた盆地というのは、この地方特有の地形だ。山頂付近の宿から海を見下ろすと、明るい屋台の光が夜の景色をやんわりと浮かび上がらせていた。彼女にせがまれるまま、まるでろうそくの火に引き寄せられる夏の虫のように僕たちは祭囃子の賑わいの中にいた。りんご飴を頬張る彼女を見ていると、時が有限である事の切なさを思わずにはいられなかった。
 夜中に宿に戻ると、真っ暗な部屋の中からもう一度麓の景色を見下ろした。片付けに追われる祭りの屋台にも、彼女と交わした口づけの中にも、確かに夏の終わりの気配がした。