「虐殺の年」
虐殺が始まった。兵士たちが車で広場に乗り付けると、市民たちは逃げる間も無く弾丸の餌食になった。それはまったく激しい雨のように降り注いだ。虐殺のあとの広場には血の水溜まりが出来た。兵士たちは満足気な様子もなく、スケジュールを淡々とこなしただけといった目をしていた。そのときふと、ひとりの兵士の目が血の水溜まりの中に動く白い影を捉えた。よく訓練された兵士は考える間もなく身体を迅速に動かし、その白い影に弾丸の雨を降らせた。
兵士は油断なく生存者がいないか確認した。そしてさっきの影が、白いワンピースを来た少女だったことを見つけた。戦争なのだ、仕方が無い。温かい感情は母国に置いてきた。それを持ったまま戦地に赴くことは、まさに自殺行為だ。任務完了。兵士はくるりと背を向けて車に戻ろうとしたとき、少女が手に何かを持っていたことを見とめた。それは一輪の花だった。さっきそこで摘んできたばかりといった感じだった。それが雨上がりの広場に咲いていた。兵士は手を伸ばしてその花を少女の手から摘み取り、それを胸ポケットに仕舞い込むと、車へと戻って行った。