妄想 | shingo722のブログ

shingo722のブログ

ブログの説明を入力します。

 「妄想」
 
 「考えを整理する必要があったんだ」
 僕は言い訳するように言った。
 「女性と寝る事で?」
 彼女は興味深そうに聞いた。
「その夜は色々なことが自分の身に起こって、どうしようもなく頭がモヤモヤしていたんだ」
「奥さんの告白を聞いた事とか?」
「それもひとつだ。彼女が結婚して子供が産まれてからも、若い男に抱かれる妄想に捕らわれることがあるということは理屈では解る。彼女も健全な性欲を持った女性だからね。そのことを責めるつもりは無い。だから僕がその意趣返しとして、娼婦の誘いに乗って相手の部屋に行ったのでは無いということも分かって欲しいんだ」
「ふうん」
 彼女は曖昧に言った。
「健全な性欲を持った女性が若い男に抱かれることを妄想することは“よく”わかるわ。ただ、そのことで頭の中を整理しようと思ったことはないわね」
 そう言って笑った。
「とても入り組んだ話なんだ」
 僕は言った。
「じゃあそのことであなたと奥さんの中がギクシャクすることも無いわけね?」
「今のところは」
「今のところは?」
「僕のしたことが露見しない限りは」
「安心してちょうだい。私は人の家庭を掻き乱して喜ぶほど下品な趣味は持っていないわ」
「今のところは?」
 僕がそう言うと、彼女は少し微笑んだ。
「そう、今のところはね」
 彼女が部屋を出て行ってしまったあとで、僕は自分がさっき言葉にしたことを色々な角度から考え直してみた。頭の中を整理するために女性と寝る。倫理的な是非はどうあれ、それが僕の行動に対する正直な意味づけだった。これから先どうなるかまでは分からない。もう冷めてしまったコーヒーを飲み干すと、僕は妻の待つ家へと帰って行った。