郵便ポスト | shingo722のブログ

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 「郵便ポスト」
 
 窓の外では雨が降り続けていた。やれやれ、これで何日目だろう?僕はあくびをしながら思った。キッチンでは妻が朝食の用意をしていた。何もかもが気だるかった。部屋のなかにもしっかりと雨の匂いは染み付いており、色んなものを薄暗い絵画のような陰鬱なトーンに染めていた。朝刊の記事にも、テーブルの上のトーストにも、冷蔵庫の中の賞味期限が間近のマーガリンにも雨の匂いがした。
「どこかに出掛ける予定はある?」
 妻は聞いた。
「いいや、どこにも」
「コーヒーがもうすぐ無くなりそうなのよ」
 明日の朝、コーヒーのない朝食を想像したらぞっとしたので、僕は買いに行くことにした。
 家の近くの郵便ポストの前で傘をさして背伸びをしながら手紙を入れようとしている小学生ぐらいの男の子を見た。ようやく手紙がポストの入り口に入ったとき、限界まで背伸びしていた男の子はバランスを崩して水たまりに尻餅をついた。男の子は懸命に泣くまいとしていた。手紙に染み付いた雨の匂いに混じって、この子の気持ちと頑張りが手紙の相手にまで届くといいな。僕はそう思った。陰鬱だった僕の心に、少し晴れ間がのぞいていた。