「兵隊のみる夢」
兵隊のみる夢は、遠く離れた祖国で遥か昔、幼少期に庭で遊んだ記憶である。相手は近所の友達だか幼馴染の女の子だか、そうでなければ両親のどちらかである。それが今、祖国を離れた敵国で、激しい飢えと渇きに苦しみながら思い出される。母の作ったクッキーが食べたいな。薄れゆく意識でぼんやりと思う。死んだらまた、母の手料理が食べられるのだろうか?いや、まだ死ねない。両親は未だに祖国で自分の帰りを待ち続けている。腹に力を込め、最後の力を振り絞って前進する。敵兵の影がチラリと視界の隅をよぎった。次の瞬間、激しい痛みが脇腹を襲った。いや、それは痛みですらない。衝撃と熱、そしてそれが冷たさに変わるとき、再び意識が遠のく。まだ死ねない。もう1度母の手料理を食べるまでは、両親の顔を見るまでは。まだ。