「路地裏の風景」
何もかもが陰鬱だった。午前2時の路地裏に置いては、ゴミ袋もその間を這い回るドブネズミも飲食店の排煙ダクトも、この世の終わりを示唆するかのように澱んで見えた。吐くまで飲んだのは久しぶりだった。ぼんやりとした頭で僕はその日一日僕の身に起こったことを思い返してみた。何もかもが古い映画のフィルムを見るかのように遠い昔に起こったことのようだった。まず彼女が出て行った。次に僕がしたことは彼女が残して行った荷物をまとめて集荷場に持っていくことだった。それだけのことを済ませてしまうと僕は部屋の壁にもたれて煙草を吸った。2年続いた禁煙はそこで終わった。なんだか呆気ないものだな、と思った。あれだけ苦労してやめたのにな。しかし、物事の終わりなんてそんなものかも知れない。結局のところ、陰鬱な風景は僕の心の投影でしかない。路地裏の景色もガランとした部屋も他人の顔ばかりの人混みも、彼女がいないという点で共通していた。ウイスキーと煙草でまるで他人のものみたいになった頭を抱えて、僕は家路についた。