「道化師」
ショッピングモールでの買い物の途中、エスカレーターの前の広場で道化師を見た。彼(おそらく彼で合っていると思う。分厚いメイクで顔立ちは分かりかねたが)は大きな玉の上に乗ったまま、ジャグリングをして見せていた。僕はエスカレーターに乗って次の目的地に向かう途中、その様子を見るともなく見ていた。
ふと、その道化師が後ろを振り返った瞬間に僕と目が合った気がした。次の瞬間には僕自身が道化師であり、僕の姿をした道化師が遠くのエスカレーターから僕を見ていた。その目は笑ってはいたがどこか哀れみを含んだ目だった。大勢の観衆も笑いと哀れみが入り混じった目で僕を見ていた。皆が僕の芸に喝采を送る振りをして、どこかで失敗を望んでいた。僕は強張った笑みを浮かべながら冷や汗をかき続けたが、誰も分厚い道化の化粧の下の僕の本当の表情には気がつかない。僕は大声で叫びたかった。「僕を嘲笑うのはもうやめてくれ」と。
「何をぼーっとしているの?」
次の瞬間には僕はエスカレーターに乗って買い物に向かう途中だった。
「そんなにさっきのピエロが面白かった?」
彼女は聞いた。
「うん、まぁね。」
「さぁ、さっさと次のお店に行きましょう。日曜日だし、グズグズしてると買いたい物が先を越されちゃうわ。」
彼女はたくさんの買い物袋を抱えた僕を尻目に次の店へと急いでいった。僕はよたよたと彼女の後を追いかけながら、さっきの道化師と観客たちの目を思い出していた。誰もが僕の失敗を望んでいた。僕は彼らの興味をひくために必死におどけ続けていた。まるでそこに存在の根源があるかのように。