「考え方」
ついてない事というのは重なるものだ。コーヒーカップに手を引っ掛けて中身をこぼしたかと思うと、ポケットの中の小銭をばら撒いたりと、まぁそんな具合だ。問題は我々がそれをどう受け取るかである。命を失わなかっただけまだマシだった、と。
「そんなに落ち込むなよ。」
僕は言った。
「命まで取られたわけじゃないんだからさ。」
「でもさ、200万だぜ?」
僕にとっては命取りだったかも知れない。
「400万の儲けになるはずが、半分の200万になっちまったんだ。ちょっと売りのタイミングを逃しちまったばかりにさ。これだから株は怖いんだ。」
彼は両手の手のひらを上に向けて、この世の終わりといった顔で大きなため息をついた。世の中にはまぁ、いろんな考え方があるものだ。
「そんなわけでここの払いは頼むよ。なにせスッカラカンになったようなもんなんだからな。」
そういうと彼は田園調布の豪邸に帰って行った。家には美人の奥さんと2人の娘が待っているらしい。僕は喫茶店の払いを済ませると一人暮らしのアパートに戻ってカップラーメンに湯を注いで食べた。まったく、世の中には色々な考え方があるものだ。