「夜中のベッドにて」
目が覚めたとき、ベッドの時計は午前3時を示していた。1日のうちで最も世界がしんと静まり返っている時間だ。表の通りにも車の走る音1つ聞こえない。しかし、何かが僕の意識を揺り起こした。耳を澄ませるまでもない。ベッドで隣に寝ている妻が啜り泣く声だった。それは最初のうち、鼻を啜る小さな音で始まり、最後には嗚咽となってむせび泣いた。
僕には定期的に外で寝ている女性がいた。仕事帰りのバーでたまたま隣り合わせただけの間柄だったが、彼女といると不思議とリラックスした気持ちになることが出来た。妻と2人でいることが気詰まりというのではない。ただふと、日常の袋小路の中に閉じ込められたような、どこにも行き場のないような気持ちになることがあるだけだ。閉塞感というのとはまた違う。ただ周りを見渡しても、その景色が僕にとって何を意味するものなのかが突然分からなくなってしまうようなことがある。
あるいは僕は言い訳をし過ぎるだろうか?時計は午前4時近くを示していた。ひどく喉が渇いていたが、僕はあきらめて目を閉じ、妻とのこれからのこと、そこにあったかも知れない未来のことを想像してみた。しかしそれは上手くいかなかった。僕は妻と別れるのだろうか?
やがて外が白み始め、僕は否応なく日常へと押し出されていった。