「嘘」
人は皆、嘘をつく。これは自明の事実だ。自分は生まれてこの方、1度も嘘をついたことのない清廉潔白な人間だというヤツは、何か企みがあるか、あるいは浮気症だ。
「まるで身に覚えがない。」
僕は椅子の上で脚を組み直し、声のトーンに変化が出ないよう慎重に言った。しかし、
「嘘おっしゃい。」
彼女はピシャリと言った。彼女は僕に背を向けたまま洋服にアイロンをかけ続けていた。それでぼくはさらに居心地が悪くなった。
「悪かったよ。」
結局僕はあっさりと白状した。しかし僕にも言い分はあった。
「でもさ…」
「言い訳はしないで。」
彼女はまた、断固として妥協の余地はないというようにキッパリと言った。
「今あなたに出来ることはもう1度コンビニで全く同じプリンを買って来ること。それ以外の選択肢は一切受け付けません。」
やれやれ、そもそもプリンを買ってきたのは僕だし、冷蔵庫の賞味期限が切れかかった食材を整理していただけなのだ。しかし、一切の反論の余地は許されない以上、僕は黙ってコートを羽織り、近くのコンビニまで買い出しに行くことになった。実際のところ、反論を試みたところで僕の言い分が通ったことなど1度もないのだ。