かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」 -99ページ目

私的 桃太郎伝説 16

「 ああ、これはキビダンゴだよ。旅立ちにあたって俺の親がこしらえてくれたんだ。 」



桃太郎が言うと、猿は指をくわえてキビダンゴの入った袋を見つめて、



「 ダンナ、そのキビダンゴを一つだけでいいんでもらえませんか? 」



と言いました。すると、桃太郎は顔色を変えて目をカッと見開き、



「 何を言うか。貴重な食糧を、何故お前ごときものにただでやらねばならん。 」



と猿を一喝しました。食べ物のことになると、桃太郎はすぐムキになります。



「 いえ、ただでとは言いません。キビダンゴをくれる代わりに、あっしを鬼退治の共に連れて行ってください。きっとお役に立つと思います。 」



「 鬼退治の共に?お前が何の役に立つと言うのだ。 」



「 例えば、あっしはダンナと比べれば体も小さく、ゆえにすばしっこいですから、敵情の偵察に向いています。敵の陣容がいかなるものか、あらかじめわかっていれば戦いやすくなるのではないですか? 」



「 ふ~む…。 」



桃太郎は腕を組んで考えました。確かに猿の言葉には一理があります。



それにさっきから猿の態度には生意気な素振りがなく、従順に桃太郎の命令を遂行してくれるような感じがありました。



「 よし、いいだろう。お前を連れて行ってやる。ただし、怪しい行動をとったり、命令に背いたりしたら痛いめにあうからな。 」



「 ありがとうございます。必ず手柄を立ててご覧に入れます。 」



「 しかし、お前は何故そんなに鬼退治に行きたがる?キビダンゴだけが目的ではあるまい。 」



「 はい、もちろんキビダンゴも欲しくてたまらないんですが…実はあっしも、その鬼って奴を見てみたかったんです。ウワサに聞いた時からね。それにダンナの怪力をもってすれば、ひょっとしたら…なんてことを考えると、見に行きたくてしかたありません。 」



「 ふん…。 」



桃太郎は鼻で笑いました。



「 まあいい。とにかく邪魔にだけはならないようにしろよ。 」



「 はい!よろしくお願いします。 」



猿は喜び勇んで、目を輝かせました。



こうして、旅の仲間として猿が加わることになりました。