かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」 -267ページ目
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官能小説「放課後の夜」一

ふと、目が留まった。

先生がスカートを履いている。

波川良雄のクラスの数学教師として今年の4月から赴任してきた鈴木奈津子は、それまでの7ヶ月間、ずっとパンツをはいていることが多く、色も地味な紺色とかカーキ色とか、そんなのばかりだった。

それが今日はどうしたのだろう。

色こそいつもの地味な紺色だが、わずかに膝が見えるくらいのスカートを履いているではないか。

さっきから奈津子は隣の席の吉川哲也に数学の指導をしている。哲也の席と良雄の席とは1メートル弱の間隔があり、そこに奈津子は立っていて、当然ながら良雄には背を向けている。

時折、奈津子は哲也に指導しながら身をかがめて良雄のほうにわずかに尻を突き出す。

(おかしい、何かおかしい。)

良雄はどぎまぎする胸を押さえながら、それでもその目は時折揺れるスカートの下から覗ける、形のいいふくらはぎに釘付けになっていた。

(ああ、駄目だ。なんで。)

はっきり言って、奈津子は美人とは言えない。げんなりするほどの不細工でもないが、目にはあまり力がなく、たれ気味でシワが少し寄っており、見方によっては優しそうな顔と言えなくもないが、人の目を惹きつけるほどのものではない。

顔全体の肌の張りも、中学3年生である良雄たちと比べれば、やはり数段衰えていると言わざるを得ない。

奈津子は37歳なのだ。結婚しているし、子供も2人いる。

オバサン。今まで奈津子のことを思うと、必ずと言っていいほどその言葉が頭をよぎった。

実際、哲也や他の仲間も奈津子のことを陰では「数学のオバン」と呼んでいる。良雄自身も、仲間内では奈津子のことをそう呼んでいるのだ。

それなのに。

今、良雄は奈津子に、しかもスカートの下からわずかに覗けるふくらはぎをきっかけに、性的な興奮を感じてしまっているのだった。
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