かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」 -154ページ目

官能小説「放課後の夜」五十

待ち合わせ場所に着いた頃には、空は暗く、雨雲に満ちて小雨が降り始めていた。

そこは戦国時代に大きな戦争があった有名な古戦場で、今は休日などに子供連れの家族らが集まるような広い原っぱ、公園になっているのだが、平日の夕方には店も閉まっていて観光客もおらず、人気はほとんどない。

良雄はシャッターが閉まっている土産物屋の軒下で雨宿りをしながら、今か今かと奈津子の到着を待っていた。

奈津子に渡したメモには、そのすぐそばにある駐車場で待っていると書いておいた。

正確な待ち合わせ時間までには、あと十分ほどある。

良雄がそこに着いたのは、さらに三十分くらい前である。思ったよりもずっと早く着いてしまった。ひょっとしたらもう来ているのではないかと思ったりもしたのだが、指定した駐車場には車は一台も留まっていなかった。

(あと十分…。)

良雄はそこに着いてからもう何回も腕時計で時間を見ている。

(先生が来たら、どんな顔をしたらいいんだ…。)

来たら来たで、妙に照れくさい。

では来なくてもいいのか?

(いや…それは絶対駄目だ!)

もし来なかったらなどと、考えるのも嫌である。

雨はさめざめと降り続けている。良雄の心に、少しずつ染み入って濡らしていくように。

待ち合わせの時間まで、あと三分、あと二分、あと一分…。




奈津子は来ない。




なおも時間は過ぎ、十五ほど経過した。

(どうして?)

(やっぱり嫌なのか…?)

(それとも何かあったか?)

絶望的な気分に浸っていたその時、駐車場に一台、赤いセダンが入って来た。

(先生の車じゃない…。)

奈津子のあの黒い軽自動車とは違うと思いつつも見ていると、その車は雨宿りしている良雄の近くのスペースに止まった。

運転している女性が、良雄をじっと見つめている。

良雄は息が止まりそうになった。

いつもと違って髪を後ろに束ね、サングラスをかけているが、その女性は奈津子に間違いなかった。