かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」 -153ページ目

官能小説「放課後の夜」五十一

良雄は車に駆け寄る。

奈津子が窓を開け、

「 ごめん、後ろの座席に乗ってくれる? 」

と言った。

なぜ?困惑しながらも良雄は指示に従って後部座席に乗り込んだ。

「 二人で乗ってる姿、見られたらまずいでしょう?お互い普段着なんだし。悪いけど我慢して、そこに横になって。 」

奈津子がミラー越しに落ち着いた声でさらに指示する。

確かに、見られたらまずい。良雄は素直に横になり、窓から自分の姿が見えないようにした。

車が静かに走り出す。

「 先生…来てくれたんですね。 」

横になったまま、良雄が奈津子に話しかける。

「 あそこでずっと待ってたの? 」

奈津子がまた落ち着いた声で言う。

「 はい…でも、そんなに長い時間待ってたわけじゃないですよ。 」

車は一般車道に入る。雨に濡れたアスファルトを走る音。すれ違う対向車の音。

…沈黙。

誘いだしておきながら、良雄にはなんのプランもなかった。頭の中は奈津子との甘い情事への夢ばかりで、そこにたどり着くまでのことに頭が回っていない。

良雄は、自分の計画性の無さを恥じた。

(しまったな…どうもっていこう?)

(こんな時、何を話したらいいんだ?)

奇妙な体勢のまま、良雄は煩悶する。

が、そんな良雄に奈津子があっさりと助け舟を出してくれた。

「 その体勢つらいかもしれないけど…ちょっと待っててね。もう少し離れたら、お店に入って食事しよう。ご家族には何か言って来てるんでしょう? 」

「 あ、大丈夫です。友達の家に行くって言ってありますから。 」

(そうか、まずは食事か…。)