経営の二極分化と派遣 | Tadのブログ

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ウロウロ、フラフラしている京都のAround40男(本業:診断“志”資格を持つ経営コンサルタント、副業:いろいろ)が、趣味の世界・日々思うこと・気づいたことなど、いろんなことを書いています。
ちょっとのぞいていって下さーい。


ちょっと前、国会で新しい派遣法案が可決され、以降、巷ではいろいろと紛糾していますね。


私は、2つの対立軸がある時、自分自身の信念と整合性のあるどちらか片方しか支持しない

人間ですが、これに関しては、どっちの肩も持てません。


というのも、どちらも「努力不足」だからです。





経営コンサルティングを生業にしておりますと、通常は、会社の経営側からモノを見ます。


会社全体の利益になることは何かを考え、人繰りを決め、必要であれば人の入れ替えや

減員を経営陣に提案することも、ごく日常的にあります。

そうしないと、会社自体が傾いたり、酷い場合には倒産してしまいますので。


また、会社の置かれている状況によって、必要となる人材や技能・知識も、その都度異なります。


例えば、会社ができて最初の5年は決まりきった仕事はなくて、全員が全員、何でも屋さんとして

活動しなくてはならなかった。

しかし、5年経って従業員も増え、専属的に業務に携わる人も必要になってきていた・・・


というようなことだと思っていただくとわかりやすいでしょう。

そしてこういった「オールラウンド⇔専門化」は繰り返し起こります。


その中で、とりわけ大企業のような多くの人員を擁するところでは、もう難しい仕事をこなす人は、

一部の人々に集約され、それ以外の業務はそればかりを集中的に(=機械的に、と言っても良い)

片付けるだけの人々が必要なだけになっているのが現状です。

もし、それすら不要だと判断されると、アウトソーシングに出してしまうでしょう。


こういう状況では、会社側では、中核人材を除けば、正直なところ、


「働いてくれる人は、誰でもいい」


という状態になるのです。だって、「同じような作業を集中的に片付ける」だけなのですから。

しかも作業にはマニュアルまでありますから、それを沿って作業すればよく、知識も不要です。

そこに一人一人の事情まで忖度するような義理人情は最初から存在しません。


となれば、アルバイト待遇かパート待遇で十分。もう少し長い時間働いて欲しいとなったら、派遣の

人にお願いすることでしょう。そして「同じような作業を集中的にやる」ような難易度の高くない仕事に

高いお給料が付くはずがありません。

仕事というのは、一般的に「難易度」に対してその値札が付きます。なので、アルバイト・パート・派遣の

方々のお仕事に高いお給料が付随することはまずないはずです。


良いシチュエーションだとは全く思いませんが、そういう仕組みになっているのが、今の日本の

企業社会です。私自身は全く好きではありませんが、そう作用してしまっている以上、合わせるか、

そこから飛び出すか(=私が選んだのはコレ)、しか選択肢はありません。

だとしたら、今の待遇に甘んじるのが嫌なら、「その他大勢」にならないように自分のスキルを磨いて

「難易度の高い」仕事ができるようにするしかない。しかし派遣法改正に反対している方々が、真剣に

今の境遇から抜け出そうとしているようには私には見えません。


手前味噌の話をしますが、私自身、「その他大勢」でしたよ、最初は。

しかし、それが嫌だと思いました。


「自分の人生の運命を他人に委ねてなるものか!」


ということで、必死に勉強しました。

初歩の簿記の勉強に始まり、英語も、高度な財務や経営の勉強もやりました。その勉強のための本を

買うお金を貯めるために、時給800円のアルバイトもして、食費を削り、ジュースやお酒を我慢して、

水道水を飲んで。コンビニなんかで買い物したら高いから、スーパーの特売をハシゴして、少しでも

安くて栄養のあるものを食べようと思って工夫を重ねて。

そして家に帰ったら、勉強。遊びも飲み会も恋愛もないような生活を何年もしました。


それでようやく、ある程度までは自分の運命を他人に預けなくても良い生活ができるようになっています。


そこまでしても、まだアルバイトやパート・派遣に甘んじるなら、それこそ大問題でしょうが、

まず、そういう意識がその方々にあるのかどうか。そういうハングリー精神があるのかどうか。

それなくして、安穏としながらも良い雇用待遇が欲しいと思ってらっしゃるのだとしたら、そりゃ無理な話

でしょう。だから「努力不足」だと申し上げるのです。

私は多くの方を敵に回してでも、


「それは無理な願望だ」


と申し上げたいです。




しかし、企業の側にも大いに問題があるのが、日本であります。


まず雇用慣行。

一度正社員待遇で入社できたら、あとのパフォーマンスが悪くてもずっとそれをキープできる仕組みに

なっています。それが諸悪の根源だと言って差し支えない。

それが故に、少子化も、人口の東京一極集中も、若年層の貧困化も起こるのです。

そして格差の固定も。


ということは、一旦正社員として会社に雇用されたら、サボっていても、ミスしても問題ナシです。

(東芝の粉飾決算や厚生労働省の情報流出の件を思い出していただければ明々白々ですね)


そしてその尻拭いを自分達でやるなら、そんなに文句も出ないでしょうけれど、なんと現場で矢面に

立っている人々にそれをやらせる(フクイチを見ればわかるでしょう)。

その矢面に立っている人々こそ、パート・派遣・契約等の期間雇用社員の方々だったりします。

故に、不満が続出するのです。


日本の会社の正社員雇用は、世界でも類を見ない「雇用期限未設定型雇用」ともいうべき代物です。

こんなの日本だけ。


海外では正社員とかパートとかいう区分がそもそもないですし、役員以外はどの社員も基本的に

1年契約で、それをひたすら更新するだけです、もし長く居たいのなら。

もし会社側から継続雇用のオファーがなかったら、別の仕事を探すだけ。

そして、重い責務を背負う職務に就きたい方には、非常に良いお給料と福利厚生が与えられますが、

その代わり、残した結果が酷ければ、来年のオファーはもらえません。

逆にそこまで重くない責務を負う職務の方には、安いお給料となけなしの福利厚生のみ。その代わり

厳しく結果責任を問われることもありません。


これって、極めてフェアではありませんか?


これを一向に取り入れようとしない日本企業も×××です!

基本的人権の「平等権」にも反していると思います。

(勿論、それは理念的な話であって、日本の雇用法上は間違っていないとされてしまっているでしょうが)




まとめますと、私が申し上げたいのは、


派遣とかパートとか、そういう身分的区分ではなくて、職務に応じた組織構造に変更すれば、

上に記した2つの問題は両方とも解決できるのですから、そうすべきだということです。


より高い職務をこなせるようになろうとしない、

そして、職務に応じた組織を要求しないアルバイト・パート派遣労働者の側も「努力不足」だし、


人間の良心やフェアネスに照らし合わせて、組織構造をデザインしない企業側も、

大企業言いなりの政府や首班政党も大いに「努力不足」だ、


ということです。

だから、どっちもどっちだ、ってことなんですけどね(苦笑)。




ですが、最終的にどうしたいかは、それぞれの人が決めることです。

そのために、選挙権があり、基本的人権などの各種の権利が、「憲法によって」我々に与えられている

のですから。


私はそれをフルに生かして、人様のお役に立ちたいし、自分自身充実した時間を過ごしたい。

素直にそう思っているだけです。



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