個人事業を行っている人は、「報酬・料金等の支払調書」がなければ天引きされた所得税の還付等が受けられないのか。

 

  いいえ、

  「報酬・料金等の支払調書」がなくても還付等が受けられます。

 

 個人事業主は、継続して帳簿を記帳する義務があります。

収入金額や収入金額から控除された源泉徴収税額は帳簿に記載されているので、

報酬・料金等の支払調書」は必要ありません。

 

なお、「報酬・料金等の支払調書」とは、報酬等の支払者が報酬等の支払状況を税務署へ報告するために作成する法定書類です。

 

  フリーランスについて

 

 「報酬・料金等の支払調書」を受領する人の中には、いわゆる「フリーランス」といわれる人も多いようです。

 

「フリーランス」については、必ずしも明確な定義がある訳ではないようです。

「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」によれば、

 

「フリーランス」とは法令上の用語ではなく、定義は様々であるが、本ガイドラインにおける「フリーランス」とは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指すこととする。」としています。(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」令和3326日、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名)

 

個人がこのような「フリーランス」としての収入を主たる収入としている場合の税務上の取扱は、事業所得となります。

 

フリーランスの収入は、他から業務を請負って役務提供または完成品等を納入することによって生じるものということになります。

 

  さて、

個人事業であるとすれば、その収入およびその収入を得るために直接要した費用については、帳簿に取引の発生順に記帳して収支を明らかにする必要があります。

 

  収入については、

  依頼主に対し請求書を提出してその報酬を請求します。

 

その請求書には、提供した仕事の明細、その対価の額、消費税額、仕事の種類によっては控除される源泉所得税などを記載し、差引請求額が記載されます。

 

 帳簿には、その請求書の発行および入金ごとに、請求書等の明細から取引月日、取引先、取引内容、収入金額、消費税額、控除される源泉徴収税額を記帳します。

 

(注1)消費税額は、税込経理を選択している場合および免税業者の場合には、「売上(収入金額)」に含めて記帳します。また、経費についても同様です。

(注2)源泉徴収税額は、「事業主貸」という科目を使用します。

(注3)個人事業者で免税業者の仕訳例

     Shinへ100円の請求書を発行。源泉所得税は10円です。

    <請求書発行の日>

借  方

貸  方

摘  要

売掛金

 

100

売上

100

Shinへの売上

合計

100

 

100

 

 

<売掛金の入金日>

借  方

貸  方

摘  要

普通預金

(現

90

売掛金

100

Shinへの売上金入金

事業主貸

10

 

 

Shinに対する売上から控除された源泉徴収税額

合計

100

 

100

 

 

  (注4)(注3)のような複式簿記による記帳が困難な人は、少なくとも現金出納帳、売上帳、仕入帳および経費帳を記帳する必要があります。

      この場合、控除される源泉徴収税額は、売上の内書きとして記帳するとよいと思います。

 

      国税庁では、「帳簿の記載のしかた」という冊子を発行しています。

      kichou03.pdf (nta.go.jp) (←p8参照、国税庁ホームページ)

 

(注5)記帳とは、取引の発生順に仕訳して、科目別に記載することです

     取引とは、売上を請求した、売掛金が入金となった、仕事に必要なものを購入した、減価償却費を計上したというように収入または費用が発生する、あるいは資産・負債が増減することなどをいいます。

 

 

  経費については、

  領収書等に基づいて、記帳します。

 

 記帳を継続することで、12月31日におけるそれぞれの科目の合計額が、その年1年間の収入または各経費等の合計額となります。

確定申告をする際、事業所得については、「青色決算書」または「収支内訳書」の科目欄にその合計金額を転記するだけです。

 

 (注)「所得の内訳書」の作成

同じ種類の所得が多くあるため、所得税確定申告書第二表の「所得の内訳」欄に書ききれない所得がある場合は、申告書の付属書として用意されている「所得の内訳書」に記載して提出します。

 

なお、国税庁ホームページの確定申告書作成コーナーを利用した場合には、確定申告書第1表の青色表示の事業所得をクリックして明細を入力します。入力された内容から「所得の内訳書」が自動的に作成されます。

 

記載する項目は、次のようなものです。

所得の種類(例えば、営業等、農業、不動産、雑などです。)、

種目(その内容を簡記します。たとえば原稿料、外交員報酬などです。)、

取引先名および住所・所在地、

その取引先に対する1年間の収入金額、

天引きされた所得税の金額